お伊勢参りならぬ「いせや」参り
日曜日。突然思い立ち西荻窪・吉祥寺に行くことにした。
きっかけは妻の見ていた「パン特集」の雑誌。そこに出ていた西荻窪の行列のできるベーグル屋さんに行きたい、と妻がつぶやいたことから始まる。
妻は月に1度西荻窪までフラワーレッスンに通っているので慣れた地なのだが、普段下町をぶらぶらしている私にとって「新宿以西」は西遊記の悟空一行が天竺を目指すようなもの。私はちょっと渋った。
が、ちょうどその日。井の頭公園で興味深い音楽イベントがあったことを思い出した。でもまだ冒険に出るにはちとまだ気が重い。
井の頭公園=名店『いせや』
そんな等式が頭をよぎった。これで腹は決まった。いざ天竺へ!
西荻窪のベーグル屋『Pomme de terre(ポム ド テール)』に着いた時には既に15人ほどが列を作っていた。並んだ瞬間に後ろにも続々と列が出来ていく。なかなかの賑わい。
ある時。列に並んでいる人に自転車に乗ったおばさんが声をかけた。「これ、何のお店ですか?」「ベーグルです。」そう聞いたおばさん。自転車をスタートさせながら「あぁ、パンね。」そう言い残して去って行った。「ベーグル」という正確な情報を得たにも関わらず勝手に「パン」と変換させてしまったおばさん。並びながら「俺は最高のベーグルを得るためにここにいるんだ。」そう強く思った。
が、列がだいぶ前に進んだ頃ふとあることが頭をかすめた。「ベーグルって何?」もし私が同じように誰かに聞かれたら…。「これ、何のお店ですか?」「ベーグルです。」「そう…。ベーグルって何?」「……。パンです…。」これではさっきのおばさんと一緒だ。恥を忍んで妻に聞いた。「ねぇ、ベーグルとパンってどこが違うの?」「……知らない。か、たち…かな?」ベーグルの定義を知らず列に並ぶ夫婦…。(注:簡単に言うと、生地をそのまま焼くのがパン。一度茹でて焼くのがベーグルらしい。)
30分ほど並びベーグルを買いそのままバスで吉祥寺へ。井の頭公園で青空の下食べることにする。好天と名残の桜の影響か。吉祥寺も井の頭公園も大勢の人でごった返している。
目当ての音楽イベント『音響ジャム』は公園の外れで行われる。途中買った缶ビールをあけベーグルを頬張る。もっとしっとりしたものかと思ったら周りはカリッと、中はふっくら。外で食べるにはおにぎりやこういった片手で食べられるものがいい。
『音響ジャム』。久々にくじらや小峰公子さんのヴォイスや様々な笛と電子音の融合を楽しむ。大自然に囲まれながら聴いているとあたかも音楽が地球のメロディーと人間のノイズを醸し出しているように感じられる。
イベントが終わる頃、缶ビールはすでに3つ空になっていた。気分よく『いせや』に向かう。今回で2度目となる「いせや」は相変わらずの大盛況。老若男女いろんな人が一つ屋根の下酒と会話を楽しんでいる。「いせや」と言えば何といっても「高田渡」。たまたま携帯にダウンロードした曲が入っていたので何度となく「流しちゃおうか」という衝動に駆られる。
瓶ビールは当店でもおなじみ「サッポロラガー(赤星)」。焼き鳥や刺身をアテに飲む。ワインに氷をぶちこんだ「かち割りワイン」に切り替え更に飲む。外はまだ明るい。
モウモウとあがる煙に見送られながら店を後にする。なかなか程よい酔い加減。ちょっと上野へ回り道して『たきおか』でもう1杯。
夫婦共々自然と音楽とお酒を堪能できたいい日だった………が、次の日膝の半月板の痛みが再発した。昼酒のツケ、とは思いたくないが…。


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